GR IIIx Urban Edition ボディ塗装の秘密(いなば)

2022.07.20 BLOG

こんにちは、いなばです。

今週末にGR IIIx Urban Edition単体モデルが発売されます。
発売直前という事で、久々にデザインのお話です。

4月に限定発売したGR IIIx Urban Edition Special Limited Kit、そして今回のGR IIIx Urban Edition単体モデルにも採用されている特徴的なボディ表面の塗装は、GR III Street Editionで初めて採用された塗装です。この塗装に行きつくまでは大変苦労した思い出があります。

GR IIIx Urban Edition

GRの特別モデルは過去に様々なバリエーションがありましたが、GR IIIでは「ストリートスナップ」をテーマとして、ボディの塗装はアスファルトをイメージさせようという事は直ぐに決まりましたが「これはヤバいぞ」と、心の叫びが...

ほんの4~5年前までは特殊な表現が可能な塗料が世の中には多種多様にありました。
ところが、近年は環境対応や素材感を活かす製品が多くなり、特殊な塗料が極端に少なくなっている事を塗料メーカーさんからの情報で聞いていたので「早めに検討しないとマズい」という事で企画スタート前から検討を開始!

通常モデルのブラック色をメタリックグレー色に変えて塗装したサンプル

さぁ、最初の塗装サンプルです...ダメダメですね。
当初から暗めのメタリックグレー色の塗装表面をザラッとさせれば何とかなるのでは?と思ってましたが、何ともなりませんでした。

これは単純に塗料で表現するよりも塗装の方法を変えるしかないと思い、塗料メーカーさんに様々な塗装方法でサンプルを作成して貰いました。

塗装サンプルの一例(一部にボカシを入れています)

ヒントになったのは、一眼レフのボディに使われているレザートーン塗装です。
厳密には一眼レフの塗装は塗料の飛沫量が少ないので、社内では「チラシ塗装」と呼んでいますが、この塗料の飛沫量を多くして塗料の粒で埋め尽くすのが本来のレザートーン塗装です。

昔の塗装技術なのですが、この技術を使いつつ本来厳禁なメタリック塗料を使い、更に下地と飛沫させる塗料を同じメタリック塗料にすると言う、これも厳禁な方法でアスファルトのイメージに近づける事が出来ました。

この方法が厳禁なのは、メタリック(金属粉)がどうしても溜まってしまうので、その部分が黒ずんで見えてしまう事です。
本来であれば失敗である黒ずみを利用してアスファルトのイメージを出しているので、逆に言えば調整が大変ですが、黒ずみとメタリック本来の光沢と塗料の凹凸がミックスされて良い仕上がりになりました。

レザートーン塗装で再現された塗装表面

めでたし、めでたし...と行けばよいのですが、上の写真は平らな板に塗料メーカーの職人さんが手で噴いて塗装して頂いたサンプルなんですね。
実際の量産品は工場のライン上で機械によって塗装する事になる訳で、つまり人の手で噴いていた工程を機械に置き変えて塗装表面を再現する事になります。

何度も工場に出向いて無理難題を塗装ラインの技術者にお願いしていましたね。
議事録を見返して見ると「あと3ミクロン塗装膜の厚さを増やして」とか、とんでもないこと言っていて冷や汗が出ますが、その努力のおかげで無事皆さんのお手元に届ける事が出来る製品になりました(工場の皆さん、いつもお手数掛けます)

実際のGR IIIx Urban Editionの塗装表面

この塗装は明るい場所や暗い場所で見え方が全く変わるので、日差しや天候で見え方が変わるアスファルトのイメージにマッチしたかなと思っています。

内緒ですが、ここまでで約半年かかってます(記録を辿ってビックリ)

最後にアスファルト繋がりのオマケ話ですが、GR IIIx Urban Editionの終了画面にはアスファルトをイメージした背景画像が使われています。
実はこの背景画像、私が撮影した駐車場のスナップ写真のアスファルト部分を画像編集して使っているんです。

GR III Avモード F2.8 SS1/250 ISO100 EV0.0 AWB HDR調

GR IIIx Urban Editionの終了画面

一見CGっぽいですが、本物のアスファルトの写真を使っているので電源オフする時に、たまには思い出してあげて下さい。

そして、週末にGR IIIx Urban Editionがお手元に届く方や、既にお持ちの方は本体塗装をじっくり見て「うわぁ、やっちゃってるなぁ」と思って頂ければ苦労した甲斐があり、嬉しい限りです。

是非、屋外に持ち出してスナップ撮影を楽しんで下さいね!

それではまた!

(いなば)




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