ピクトリアリズムな写真 (大久保)

2021.12.07 BLOG

「いい写真とは何か?そして、それを生み出すカメラとは何だろう?」
 
なんて答えの出ない大仰なこと思いながら、日々の業務に追われてあたふたしている、アプリ担当の大久保です。今回はアプリではなく、写真の話でお邪魔しました。以前、“「ボケ・ブレ・アレ」の写真”について書きましたが今回はもっと時代を遡ってみたいと思います。

「ボケ・ブレ・アレ」と言えば、僕は真っ先に森山大道さんを思い出しますが、その森山大道さんに影響を与えた写真家に、安井仲治さんがいます(森山さんは安井さんの写真をオマージュした写真集を発行されています)。

その安井さんが所属していたのが、関西の浪華写真倶楽部です。浪華写真倶楽部は、明治時代にカメラの普及とともに設立された、アマチュア写真家のサークルです。

一方、東京では日本写真会が設立されますが、その創設者で有名なアマチュア写真家に、資生堂の創始者でもある福原信三さんがいます。福原さんの写真がこちらに紹介されているので見てみたいと思います。
 
パリで撮影された作品「博労」を見ると、とても柔らかい描写で、絵画のように見えると思います。この時代にはやった表現が、ピクトリアリズムと呼ばれ、絵画表現から分岐して進化してきた写真表現になります。

安井さんの所属されていた浪華写真倶楽部でも、ピクトリアリズムは取り扱われてきました。その手法ですが、ゴム印画法や、いわゆる雑巾がけ(プリントした写真に油絵の絵の具を塗って伸ばす手法)を使って、写真を木炭のデッサンのように仕上げています。個人的には梅阪鶯里の写真が好きで、ケシの花の写真は、まるで日本絵画のたたずまいを引き継いでいます(落款が付いているのが何ともかっこいいです!)。浪華写真倶楽部の図録にその写真を見ることができます。

ピクトリアリズムは、過去には絵画の真似と言われてきましたが、最近は再評価されているようです。ちょうど、「GR TV」の2回目で、大和田良さんが「アルフレッド・スティーグリッツ」について、丁寧に解説されています。ピクトリアリズムから繋がるストレート写真(その場のありのままを撮る写真)の始まりについて知ることができる、興味深い内容になっています。ぜひ、見ていただくと今回の記事も、より面白くなると思います。


…と前置きが長くなりましたが、さっそくGRでこの表現に近づけてみたいと思います。
 
ピクトリアリズムは、ソフトフォーカス的な描写が多いですが、梅阪鶯里さんの作品のようなソフトフォーカスといえない写真もあるため、ソフトフォーカスにはこだわりません。

ただ、解像感は極力落としたいところです。当時は明るいレンズもないので、絞りはF8より暗めにして、ISO感度はできれば高めにします。

GR III,F8.0,1/100,ISO1000,ビビッド

こちらのコスモスの写真をベースにしてRAW現像してみます。

 
イメージコントロールはソフトモノトーンを使いました。また、完全な白黒ではなく作品によって調色を変えます。今回は緑にしてみました。

コントラストを浅く、できるだけ柔らかい描写にする事を考えます。
 
パラメータは、

キー:+1
コントラスト:-4
コントラスト(明部):+4
コントラスト(暗部):-4
シャープネス:-4
調色:グリーン
シェーディング:-1
明瞭度:-4
粒状感:+3

、、、ただ、まだ何かが足らないです。

そう、後処理である雑巾がけに該当するような何かが足らない気がします。そこで、もっとコントラストを下げるべ「JPEG画質調整」を加えます。

パラメータは、

コントラスト:-4
シャープネス:-4

今回は、2回「JPEG画質調整」を行いました。

 
ここまでくればいい感じだと思います。

福原信三さんは街のスナップも撮影しています。ここはソフトフォーカス気味にしたいですよね。
 
先人たちは、レンズに油を塗ったらしいですが、さすがにそこまではできないので、レンズに息をはぁーっと吹きかけます。(注:推奨できないので、自己責任でお願いします!)

この写真が

こうなります(結構こってりした感じになったと思っています)。

他にも何点か作ってみました。

それなりの雰囲気になっていると思います。

モノトーンに変換する際に、イメージコントロールの「モノトーン」「ソフトモノトーン」「ハードモノトーン」「ハイコントラスト白黒」を使い分けてもよいと思います。
また、「JPEG画質調整」も自分の感覚でパラメータを変えていくとよいと思います。

何工程か経て、最終的な作品に仕上がるのですが、その1枚だけのレシピになっていると思います。つまり、自分のセンスで作り上げた、他の人にまねのできない、1枚だけの作品になります。ピクトリアリズム写真は、基本的に1枚で表現が完結する写真だと思います。

1枚で完結するといえば、、、そうインスタグラムですね。インスタのハッシュタグ#pictorialismをみると、たった約5万枚しかありません(#GRsnapsは約62万枚)。ピクトリアリズムは、それほど出ていないようです、、、これは、チャンスだと思います。

アートの世界は今までの表現に対して疑問を投げる視点で進化してきました。デジタル写真が世に広まってから、解像感のあるシャープな写真が好まれる傾向がありますが、そのアンチテーゼとして、ピクトリアリズム表現を投稿していくのはありだと思います。

今回、結構楽しかったのですが、ふと絵画と写真の違いは何だろうかと思いました。これも、仕事をしながら考えていきたいと思います。

みなさんも、皆さんのセンスで試してみていただくと、いつも撮っている写真と違う世界が見えてくるかもしれませんね。

(大久保)

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