ボケたりブレたり (大久保)

2021.09.07 BLOG

みなさんこんにちは。
アプリ担当の大久保です。

今日はアプリの話ではなく写真の話でお邪魔しました。約1年ぶりになります。

写真は様々な才能を持った写真家たちが様々な表現を作ってきました。
今日はそのうちの一つである「ボケ・ブレ・アレ」についてお話したいと思います。

こういう、ピントが合っていなくて、ブレていて、ざらざらと荒れた画質の写真です。

少し前に仕事で、不動産写真の撮り方についてレクチャーしてほしいと頼まれた事がありました。
全くの門外漢だったので、いわゆる無茶ぶりなのですが、写真は好きなので、喜んでチャレンジさせていただきました。
不動産写真の特徴を調べるには、やはり歴史を紐解くのが良かろうということで、昔の建築雑誌を何冊か時代に分けて買いそろえました。
調べてわかったのが、広角で部屋の構造が分かるようにしっかりと水平、垂直をとり、できるだけパンフォーカスにして、解像感をしっかり出す写真が多かったのですが、ある時期の写真に違和感を覚えました。
1970年代の写真だったのですが、ピントがずれていて、写真の粒子がはっきりとわかる写真が載っていたのです。
あまりにほかの時代とずれた表現だったのでレクチャーでは使いませんでした。
同じころの国鉄(!)のポスターでも、ブレている写真をポスターに使っていることを先日教えていただきました。
「ディスカバージャパンポスター」で検索すると出てきます。

普通ボケたり、ブレたりする写真は失敗写真ですが、1968年に発行された写真同人誌の「プロヴォーク」で「ボケ・ブレ・アレ」の写真が積極的に使われ議論を巻き起こしました。
その手法が独り歩きをして商業写真にまで広がっていったのだと思います。
「プロヴォーク」はサブタイトルが「思想のための挑発的資料」となっており、その写真の解釈は評論家の方にお願いして、ここでは触れません。
「プロヴォーク」の作家でもある森山大道さんのHPにも「ボケ・ブレ・アレ」の写真を見ることができます。
その写真は抽象的ではありますが、見た人の心に残る力があると思います。
今回はそんな「ボケ・ブレ・アレ」の写真をGRで撮ってみたいと思います。

一般的に写真はピントがきちんと合い、ブレはなく、クリアな画質が良しとされます。
カメラもそうあろうと開発者が苦労して進化をさせてきました。
なので、いざ「ボケ・ブレ・アレ」を撮ろうとすると、なかなか撮れない事に気が付くと思います。

ではどうするかですが、、

*ぶれるために
まず、手振れ補正はOFFです。大きくぶれすぎるとちょっと違う表現になるのでシャッター速度は1/10程度、適正露出を得るために絞りはできるだけ絞ります。

*ボケるために
絞りを絞っていてパンフォーカスになっているので、ぼかすのが意外と難しいのです。MFにして1m以下の近距離に設定しました(被写体に応じて距離を変えました)。

*アレるために
ISOはできるだけ高くします。できれば6400以上は欲しいところです。ノイズリダクションはすべてOFFにして、イメージコントロールはハイコントラスト白黒です。明瞭度は気持ち強めに振ります。

昼間だとNDフィルターが欲しくなります。今回は用意できなかったので必然的に夜のスナップが多くなりました。何枚かご紹介したいと思います。

会社の帰り道、猫と遭遇しました。森山大道さんの「三沢の犬」に対抗して「大森の猫」です(笑)。
同じ写真をイメージコントロールのスタンダードでノイズリダクションをオートにして、RAW現像してみました。

印象が大きく変わることが分かると思います。
色情報のないモノクロだと背景の植物の緑に引き付けられることが無くなり、中央の黒猫が際立つことが分かると思います。
走りだすと猫のようなモノになり、なかなか心象的な写真になります。

続いて、やはり帰り道ですが、

工事現場の謎の箱。微妙にブラしているので「謎」感が増していると思います。

ちょっとブレなかったのですが、アレがいい感じだったので、、

ISO51200だといい感じにアレてくれます。シャッタースピードは1/4だったんですが、思ったほどブレてくれませんでした。

いい感じのぶれにするにはコツが必要で、同じシーンを何枚か撮ったりしました。
このブレ写真ですが撮っていると結構楽しく、ついつい500枚ほど撮ってしまいました。
表現手法としては完全にまねであり独自性は薄いですが、自分で撮ると様々な事に気が付きます。

いわゆる日の丸構図が多くなりました。被写体を目立たせることができます。
ボケてはいますが、何が写っているかはわかります。具体性に欠けるがゆえに、見た人は想像を広げてくれるのではないかと思います。
この写真を見た人はコロナ禍を思い出してくれるかもしれないですし、この表現は記録写真に向いているのかもと思いました。

いかがでしょうか。
気になる写真があったら表現を真似して実際に撮影してみると新たな気付きが得られると思います。どうやって撮っているのか考えるだけでも楽しいです。
また機会があれば、また写真の話などできればと思います。

(大久保)

Facebook Twitter Hatena Bookmark Pocket Google Plus LINE

PREVIOUS

【SENSE】VOL.1 Tomas H. Haraさん

2021.09.03 | BLOG

NEXT

RICOH GR IIIx を発表しました(岩崎)

2021.09.08 | BLOG

RELATED ARTICLE

GR official SNS