ブレッソンの視界と階段ダッシュ (あらいた)

2021.12.09 BLOG

先回に続いて、スナップ写真の巨匠をお手本に撮影してみるという、身の程知らず企画の第二弾です。

アンリ・カルティエ=ブレッソン (Henri CARTIER-BRESSON)の作品に、階段の上から石畳の路地を走り過ぎる自転車を捉えた写真(コチラ)があります。
南仏・イエールで撮影されたものだそうですが、その歴史的名作にあやかり、こんな写真を撮ってみました。

GRIIIx, P mode, 1/250s, F2.8, ISO400, スナップフォーカスで5mに置きピンし、連続撮影しました。
本家の作品は画面構成の幾何学的な美しさがこそが特徴ですが、そのあたりは不問ということにしてください。

上の写真、撮影ポイントの左右は建造物に阻まれているため見渡せる範囲が限定されています。
これだけ狭い視界の中でカメラを構え、自転車の到来を待って一撃で撮影するためには相当な集中力と反射神経が必要なはず。
横着な僕は、連続撮影機能を使って5枚ほど撮った中の1枚を選んでいます。


あらためてカルティエ=ブレッソンの作品を見てみると、階段の両隣りは建物の外壁となっており、やはり視界が狭い。
おそらく、見えている範囲は端から端まで10mに満たないでしょう。
狭い視界の中で彼はどうやって、自転車が横切る瞬間を予知したのだろうかという疑問が沸いてきました。

さて、ここからは完全にあらいたの推理(妄想?)なのですが、カルティエ=ブレッソンは、その瞬間を階段の上で待ち構えていたのではなく、撮影直前まで階段の折り返し部分、いや、もしかしたら路上にいたのではないかと思うのです。

 ・路上で向かって来る自転車を見つける
 ・階段をダッシュで駆け上がる
 ・瞬時に(!) 構図を決定し、あとはファインダーに全集中
 ・前輪がファインダー内に見えた、次の瞬間にそっとシャッターを切る

これらを数秒間でやってのけた結果が、今もシャッターチャンスと構図取りのテキストのように語り継がれる、あの1枚なのではないかと..。

イエールでの作品は1932年に撮影されたものだそうです。カルティエ=ブレッソンは1908年生まれ、ということは23-24歳の時のもの。
若きアンリ青年の体力と、決定的瞬間への情熱をもってすれば、あの、いびつに折れ曲がった階段を駆け上がるなんて、なんともなかった。

この推理、そんなに悪くないと思うのですが、いかがでしょう。

上の写真の直前、直後のコマがこれです。GR IIIxの連続撮影は4.2コマ/秒ですので、1秒弱の間にこれだけ動きがあるということになります。
カルティエ=ブレッソンのライカには、もちろん連写機能はなかったでしょう。1枚撮りであの構図を完成させてしまうのは神業としか言いようがありませんね。

(あらいた)

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