特別寄稿:安達ロベルトさんからの便り「写真と水彩画」

2020.05.15 BLOG

こんにちは、管理人のまちゅこ。です!
STAY HOME特別企画、第三弾。
安達ロベルトさんによる、写真と水彩画についてのお話しです。

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「写真から水彩画を描く」

私は写真家でGRistでもありますが、作曲家、そして、画家もやっています。

10代から20代前半にかけて、絵をたくさん描きました。賞をもらったり、プロの画家も一時期やっていて、本の挿絵を描いたり、絵本をつくったりもしました。主たる媒体は水彩です。

その後、音楽に、次に写真に情熱を傾けたため、しばらく絵から距離を置く時期がありました。

ところが、写真を始めて以来何年かぶりに絵を描いてみると、ものごとを違うふうに見ていることに気づいたのです。例えば、絵を描いているときも、焦点距離で構図を考えたり、それ以前より光を見るようになっていたり。

逆もまた真で、絵を描くことは、写真家とのしての成長にもつながります。

写真を撮るとき、必ずしも被写体を見ている必要はありませんね。カメラが代わりにそれを見てくれ、撮ってくれます。でも、絵を描くときは、構図、ディテール、色など、すべてを自分で見なくてはいけません。しかも写真よりも長い時間をかけて。

私が写真を教えるとき大切なものとして伝えていることの一つに「コンシャス・フォトグラフィング(=意識的に写真を撮る)」があります。意識的に写真を撮ることで、なぜそれを撮りたいのか、何を撮っているのかがクリアになります(ステートメントが楽に書けるようになったりもします)。絵を描くときは、自然にそれをやっているのです。

さて今回は、絵のシンプルな楽しみ方のひとつとして、写真から水彩画をつくるようすをお見せします。この困難な時期、写真について自宅で気軽に楽しめることのひとつが、この水彩画です。水彩は、かんたんに始められますし、他の媒体、たとえば油彩より扱いやすいのでおすすめです。

ここでは、2019年にタイに行ったときGR IIIで撮った写真をもとに、夕暮れの川を描いてみたいと思います。やってみたいなと思っていただければ幸いです。

これがもとの写真(GR IIIのすばらしさについてはまた別の機会に)。

写真を見ながら下絵を描くところから始めます。下絵は、細部をあまり描き込まなくて大丈夫。主要な部分をシンプルに描きます。

絵のいいところは、欲しくない情報は描き入れなくていいし、逆に欲しい情報を加えることもできる点です。

次にパレットに絵の具を置きます。このとき、下絵と写真を見ながら、どんな色を塗ろうかと計画をたてます。今回は小さな紙ですので、絵の具はごく少量で大丈夫。

いよいよ塗り始めます。色を塗る前に、空にあたるエリアに水を塗っていきます。これをやることで、実際に色を塗ったときにいい感じのにじみが得られます。

常に留意しておきたい点は、ごく少量の薄い色からスタートして、次第に濃い色を塗っていくということです。

ちなみに、絵の具セットを買うときは、12色など、少数色セットを買うのがおすすめ。というのは、複数の色を混ぜた方が、にじみ効果が得られるからです。たとえば、緑色の絵の具ではにじみは出ませんが、青と黄色を混ぜるときれいなにじみができるのです。

もうひとつ、写真と比較して絵にアドバンテージがあると思えることに、色を変えられるというのがあります。絵は必ずしももとの写真と同じように見えている必要はありません。この場合も、空をもとの写真よりもカラフルにしてみました。

次に川を塗ります。川の水にはできるだけ透明感を持たせます。丁寧に、でも大胆に塗りましょう。

濃い色を塗り始めます。油彩と比較して、水彩では一度塗ってしまうと修正が難しい(不可能ではありませんが難しい)のですが、ビビらず、大胆かつエレガントに塗っていきましょう。



これが出来上がりの絵です。

 
 
この時期、旅に出ることもできません。でも遅かれ早かれできるようになって、しかも、この制限を体験したことで、以前より自由を感じるられるようになるでしょう。GRは「多機能ナイフ」ではありません。たとえば28ミリ単焦点レンズといった制限があります。しかし、制限は創造性を刺激します。制限は「ゲームのルール」だとも言えます。ルールのないゲームはつまらないですよね。いま生活で体験している制限をルールだと考えて、クリエイティヴにいきましょう。

作画のプロセス全体を動画にしたのがこちら。音楽も自作です。写真には興味あるけど絵画はねと思われるかもしれませんが、チャンネル登録していただけるととてもうれしいです。


水彩画のインスタグラムアカウントも最近つくりました。 


6月に東京のギャラリーRoonee 247 fine artsで水彩画の個展を予定しています(新型コロナウィルスの影響がなければ)。今回はそのなかの1枚をチラ見せ。これは写真から描いたわけではなく、より抽象的な、想像上の風景です。

 
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安達ロベルト(Robert Adachi)
人がどのようにつながり、創造するかに常に関心を持ち、十代で外国語、プログラム言語、絵画を学び、大学で国際法と国際問題を学び、22歳で作曲を始め、32歳のとき独学で写真を始める。GR DIGITAL III、GXR、GRのカタログ写真・公式サンプル写真を担当。「GRコンセプトムービー」の背景に流れるオリジナル音楽を作曲。ファインアートの分野で国内外で受賞多数。主な出版に写真集「Clarity and Precipitation」(arD)がある。
www.robertadachi.com


★STAY HOME特別寄稿
第一弾:内田ユキオさんからの便り「写真と映画」はこちら 
第二弾:大和田良さんからの便り「写真集とGR」はこちら

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