【コラム】GRとの旅、ふたたび/安達ロベルト

2022.10.28 BLOG

今年の8月と10月の話。

長かった移動制限期間を経て、タイと群馬県の桐生に旅をした。前者は息子との二人旅、後者は「GR meet 47」の一環として。

どちらの土地にも思い入れがあった。

タイは、初めて行ったのが21歳のとき。エジプトへの旅の途中、あくまでトランジットで(当時、バンコクで降りて格安航空券を買ってカイロに行くのが最安手段だったので)2、3日いるだけのつもりだったバンコクに、心底魅了された。バンコクが恋しくなり、エジプト滞在を短くして帰ったほどだった。

東京での一人暮らしに疲れていたのだろう。微笑みを絶やさないバンコクの人々に癒された。それ以来、幾度となく訪れたが、20代では写真をやっていなかったので、そのころの写真はまったくない。

桐生には、GXRが発売されてまもない2010年、そのプロモーションイベントのゲスト写真家として行った(そのときのことは「GR meet 47」群馬会場レポートに少し書いているのでぜひ読んでほしい)。わずか一泊二日の滞在だったが、過去と現代が共存する美しい街並みと、人々の絹のように澄んだ心が好きになった。

期間が限定される旅では、目的や目標を持って写真を撮ることが大切だと思っている。だからいつも旅の前に、どんな写真を撮ろうかプランする。もちろん旅は一期一会だから、プランはあくまでもプラン。それに固執することはない。だが、それが旅の写真全体に統一感を与えてくれる。

今年の旅では、大伸ばしにプリントして隅々の子細な描写まで楽しめる密度のある作品をつくりたいと思い、それを目標にした。それには、クリアで解像感のあるレンズを搭載したGR IIIxが最適だ。

3年ぶりの海外ということもあり、タイでは、久々に心底写真が楽しいと思った。普段写真が楽しくないわけではない。ただ、どうしても仕事とか何かの目的のために撮ることが多く、楽しさ以上に責任が伴うことが多い。

桐生では、GR IIIxをポケットに入れて長距離を歩きながら、いくつかの氣づきを得た。その一つが「写真は織りものに似ている」ということだった。

化学染料、化学繊維でなく、植物染料、天然の糸の場合、桐生の会場でも引用した染色家の志村ふくみさんの言葉を借りれば、自然から色や繊維を「いただく」のだ。自然由来の美しさを活かしながらも、自分の色をつくり、織りものをつくる。

写真家も同様に、太陽や自然から、光や色を「いただく」。それを活かしながら、各自の色をつくり、画をつくるのである。

さあ、ポケットにGRを入れて旅に出よう。光や色をいただきに。

(Photos taken with GR IIIx)


安達ロベルト(Robert Adachi)
人がどのようにつながり、創造するかに常に関心を持ち、十代で外国語、プログラム言語、絵画を学び、大学で国際法と国際問題を学び、22歳で作曲を始め、32歳のとき独学で写真を始める。GR DIGITAL III、GXR、GRのカタログ写真・公式サンプル写真を担当。「GRコンセプトムービー」の背景に流れるオリジナル音楽を作曲。ファインアートの分野で国内外で受賞多数。主な出版に写真集「Clarity and Precipitation」(arD)がある。
www.robertadachi.com



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