【コラム】カメラよりも/幡野広志

2026.10.30 BLOG

中古のジムニーを買った。中古のジムニーは当たりハズレが大きい。
某中古車店を眺めてはいろんなお店で現車確認する日々が続いたので、中古ジムニーの良し悪しがわかるようになってきた。

程度がいい16年落ちの旧型ジムニーを熊本でみつけた。元々は普通の光沢のある黒い車体だったけど、艶なしのオリーブドラブに全塗装してもらった。

艶なし塗装は簡単に剥げてしまう。ドアをあけるときに爪がちょっと当たっただけでも簡単に傷がつく。
洗車機は絶対に使ってはダメらしい。

前の人がワックス洗車をしていたら、機械に残った数滴のワックスがたれてシミになるそうだ。傷を気にする車ではないけど、綺麗に塗装してもらったので大事に乗りたい。

いろいろカスタマイズして、なんだかんだ現行の中古ジムニーが買えるぐらいの金額になったけど大満足している。とてもいい買い物をした。

ジムニーを買おうと決めてから10ヶ月ぐらい探し続けた。ジムニーでなくとも車を買うときはそこそこの日数がかかる。

ブログやYouTubeでおなじ車に乗っている人を探したり、AIやネットで情報を集める。それがまた楽しいのだけど、これがカメラだったら1日か2日でサクッと購入している。

車は書類や整備に時間がかかるというのを差し引いても、カメラはあっさり買っている。

若い頃はカメラを買うときに情報を集め悩んで、ワクワクしながら買いにいって感動もしていたけど、いまはもうカメラで感動することがぼくはない。

若い人にはカメラを買うお金があるなら、中古のバイクや車を買うことをすすめてしまうぐらいだ。

車は思い出を作る機械だ。夜明け前に友達と一緒に海を目指して、朝日を眺める経験はいいものだ。

なにも若い人の青春だけじゃなくて、中年の白秋や老年の玄冬でこれをやっても素晴らしくたのしいものだ。

一緒にいるのが友達ではなく、家族になったり、ペットになったり、一人になったりするだけだ。

ぼくは熊本から東京までジムニーで旅をしながら帰ってきた。途中で車で旅する老夫婦やペットと旅する人と会った。彼らからすればぼくは気ままな一人旅にみえただろう。

知らない街を運転して狂ったローカル交通ルールに驚き、地元のものを食べて景色を眺める。

そういう思い出を記録する機械がカメラだ。

人生経験や人生の豊かさを考えたらぼくがおすすめするのは車やバイクなんだけど、ちいさいカメラでいいからあるといいんだよね。

 
 
 
幡野広志(はたの・ひろし)
1983年、東京生まれ。 2004年、日本写真芸術専門学校をあっさり中退。
2010年から広告写真家に師事。 2011年、独立し結婚する。
2016年に長男が誕生。2017年、多発性骨髄腫を発病し、現在に至る。
近年では、ワークショップ「いい写真は誰でも撮れる」、ラジオ「写真家のひとりごと」など、写真についての誤解を解き、写真のハードルを下げるための活動も精力的に実施している。
最新著書「ポケットにカメラをいれて」(ポプラ社)。
https://note.com/hatanohiroshi/



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