【コラム】一つの流れと三つの流れ/渡部さとる

2025.06.27 BLOG

17歳の誕生日、友人から一冊の本をプレゼントされた。浅井慎平『カメラはスポーツだ』。当時僕は写真に夢中でカメラをかたときも離さなかった。

浅井慎平といえば、ビートルズ来日時の写真で鮮烈なデビューを果たし、その後、雑誌の表紙やポスターで大活躍していた。カメラマンという職業を意識し始めたのは、この本がきっかけだったかもしれない。何度も読んでいたから今でもその中に書かれていたことを覚えていて、中でも印象的だったのが「一流よりも二流の方が忙しいし、儲けている」という記述。高校生の僕ににとって、それはとても意外だった。一流と二流であれば、一流の方がお金周りも良い気がしたからだ。

仕事をするようになって「一流と二流の違いとは何か」ということを教えてもらったことがある。一流とは「ひとつの流れを持っている」ということで、信念がありブレない様子を表している。一方、二流は「ふたつの流れを持っている」ということなのだそうだ。

そういう意味では、現在の僕は間違いなく三流。儲かっているかは置いといて、確かに忙しい。写真を撮って、話をして、こうやって文章を書いて、YouTubeもやっているから、三流どころではない。

二流、三流は常に一流に憧れる。ひとつのものだけを追い求める求道者のような生き方。そんな人に私もなりたい……。

そんなカメラが、リコーのGRなんじゃないだろうか。1996年にコンパクトフィルムカメラとして登場して以来、デジタルになっても、そのデザインもコンセプトもまったく変わることなく、現在まで引き継がれている、まさに超一流の存在。随分と持ち上げてしまったけど、これは事実。存在がひとつの流れになっている。

さて、三流の生き方の僕としては、カメラ選びも実は三流で、ひとつにこだわることなく、複数の流れを持っている。流れに合わせてカメラを選ぶというのは、まさに三流らしいね。




渡部さとる
1961年山形県米沢市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ、報道写真を経験。同社退職後、スタジオモノクロームを設立。フリーランスとして、ポートレートを中心に活動。2003年よりワークショップを開催。
最近ではすっかりYoutube「2B Channel」の人として認識されている。おかげさまでその功績が認められて第33回「写真の会賞」特別賞を受賞しました。現在慶應義塾大学大学院非常勤講師でもあり、近著には『撮る力見る力』(ホビージャパン)がある。
Satoru Watanabe@watanabesatoru2b




友だち追加

Facebook X Hatena Bookmark Pocket Google Plus LINE

PREVIOUS

「GR meet 47」島根会場、参加申込み受付開始します。

2025.06.06 | BLOG

NEXT

「GR meet 47」熊本会場、参加申込み受付開始します。

2025.06.30 | BLOG

RELATED ARTICLE

GR official SNS