【SPECIAL】松任谷正隆さん「73歳の初心者」

2025.05.30 BLOG


Specialコンテンツ第11弾は、松任谷正隆さんの登場です!

GR SPACE TOKYOで開催している「GR Anthology」展にも参加いただいている松任谷さん。スペシャルコンテンツ掲載用に撮りおろしてくださった作品、そして「写真」への思いをご紹介させていただきます。

どうぞご堪能ください!
 


「73歳の初心者」

はっきり言って僕は写真が下手です。まず基本的にカメラマンとしての才能がない。才能と言うより資質がない、と言った方が正しいかも。カメラマンに求められる資質とは、ある意味、勇気なんだと思います。それがどんな形の勇気であれ、それがなければ始まらない。ブツ撮り専門の写真家になりたいなら別ですが・・・それだって始めれば奥が深くて、最終的にはやっぱり勇気が・・・なんてことになるんだと思います。

そんなことを子供心に分かっていたんでしょうね。僕は写真好きではないカメラ好き小僧でした。カメラ好きでは誰にも負けなかったはずです。学校の帰り道に、毎日のように途中下車して、カメラ屋のショーウィンドウの前に何時間もへばりついていましたから。当時の僕のアイドルはアサヒペンタックス。SPは高いから露出計を頭に乗せたSVあたりが夢のカメラでした。結局、我慢できずに祖父のお金をくすねて買いましたが、写真は撮った記憶がほとんどありません。カメラを触っていたかっただけなんです。そのうちお金を盗んだことがバレて酷い目に遭いました。ま、当然ですよね。

いろいろなことがトラウマになって、写真を撮る、ということから遠ざかっていたのですが、あるとき、どうってことのない人が撮った、どうってことのない写真になぜか惹かれ、この写真達に音楽を付けさせてくれ、などという言葉が口を突いて出てしまったことを覚えています。写真から音が聞こえてきたって事なんでしょうね。ところが運命って奴の仕業で、あるテレビ番組で自分自身が写真を撮らなければならない羽目になった。そのとき、僕は写真と向き合ったことがなかった事に初めて気付かされたわけです。いやあ苦しみました。音が聞こえてくる写真を撮りたい。でも、資質もない。こうして僕のアマチュアカメラマンとしての生活が始まりました。素人なんだから下手ならやめればいいじゃん、という声も聞こえてきそうですね。そこはカメラ好きの本能と、人のお世辞なんかに踊らされたりして、ちゃっかり続けているんです。それに自分の撮ったものは、どことなく自分らしさがあるかもなあ、なんてほんの少しだけ思えるようになってきたから・・・。 
 

 
GRistコーナーもあわせてご覧ください。


松任谷正隆
1951年11月19日東京生まれ。
4歳からクラシックピアノを習い始め、14歳の頃にバンド活動を始める。
20歳の頃プロのスタジオプレイヤー活動を開始し、バンド“キャラメル・ママ”“ティン・パン・アレイ”を経て、数多くのセッションに参加。
その後アレンジャー、プロデューサーとして松任谷由実、松田聖子、ゆず、いきものがかりなど多くのアーティストの作品に携わる他、様々なコンサートやイベントの演出も手掛ける。
日本自動車ジャーナリスト協会に所属し、長年にわたり、「CAR GRAPHIC TV」のキャスターを務める。
日本カー・オブ・ザ・イヤー」の選考委員でもある。




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