【SPECIAL】上田義彦さんインタビュー企画

2021.10.01 BLOG

 
「at Home July・August 2021」を撮り終えて。
 

こんにちは!管理人のまちゅこ。です。
スペシャルコンテンツ第九弾は、GR IIIxの発売にあたり、GR IIIとGR IIIx 2つのGRで作品を撮っていただいた上田義彦さんへのインタビュー企画です。



夏の暑さが戻ったような晴天の9月中旬。
今回の作品「at Home July・August 2021」についてのお話をはじめ、写真について、カメラについて、GRについて、まちゅこ。がお話を伺いました。

 
― まずは、ぜひお聞きしたいと思っていたのですが、今回の依頼を受けてくださったのは、なぜでしょうか?受けてもらえるか不安に思いつつ、こちらにお伺いしたので、「やりましょう」と言ってくださったときには、聞き違いか?夢か??と思うくらい嬉しかったのと同時に、とてもビックリしました。

僕はGRとは長い付き合いで。1999年だったかな、「PORTRAIT(ポルトレ)」というシリーズで、森山大道さんを撮らせていただいた時に、森山さんが「これいいんだよ」と言って、GR1(銀塩)をポケットから出してきたんです。その時にちょうど、雷が鳴ってね、そんなタイミングで僕を撮る森山さんの姿が良くてね。お互いに撮り合った良い思い出です。その時からGRとの付き合いが始まって。
 
その後に撮った「at Home」という写真集も、LeicaとGR1でほとんど撮っていますね。


― それは、つまり、長い付き合いのGRだから、受けてくださった、と。

そうです。自分にとって、GRは親密な関係のカメラなので、それはもう喜んで、と思いました。僕の写真にとって大事なカメラなので。
 
生活の中とか、写真を考える上でとか、いろんな意味で、僕にとってとても大事な“出会いのカメラ”というのかな。Leicaもそうなんですけども、そんな存在です。

GRとLeicaは似ていますね。パッと撮れて、手になじむし、思うように撮れる。余計なものが無い。シンプルな道具というか。きちんと撮れるという安心感、信頼感。
そして、偏ってない。レンズもそうですけど、ニュートラルな感じというか。そんな気がしますね。

今回、従来から使っているGR IIIと、新たなGR IIIx、2台で撮りましたけど、まったく違和感なく、いままで通りのGRで。40ミリっていうのは、嬉しいですね。自分の見ている範囲とほとんど一緒じゃないかなと感じました。生理的にピッタリくるというか。
 
だから、結構40ミリで先に撮っちゃうのが多かったですね(笑)

 
― 上田さんが撮られた作品は、いい意味で、どっちのカメラで撮ったかわからないというか。40ミリかな?と思ったら28ミリだった!とか、またその逆だったりする作品が多々ありました。そこがある意味、GRっぽさでもあるのかなと思いました。実際、撮影されてみて、どうでしたか?

40ミリ・28ミリ、どちらも僕にとってピッタリでした。日常を見る視線という意味で。
コロナ禍という、これまで経験したことがなかった時間の中で、もう一度あらためて家族とか、自分の一番近いところを、結果として、GRを通して写真に残すことができたなと思うので。僕にとって大事な写真になったなと思います。

自分の息子や娘がまだ幼い頃は、たくさん写真を撮っていましたが、ある程度の年齢になると、撮らなくなってしまいがちですよね。でも、本当は撮り続けていたい。自分にとって日常というのは一番大切な時間であり、自分の喜びに気づかせてくれるもの。そういう意味でも、「at Home」の続編のような作品に仕上がったのは、よかったです。
 

― 最初は、街中を撮る、みたいなイメージもありましたか?

どうしても“新しい作品を撮る”ってなったら、本能的に“外に出る”という風に思いますが、今回コロナで、オリンピックで… そういう不思議なざわめきと、死んだような街みたいなコントラストとか、そこにある人の思いとか、いろんなものが入り混じった複雑な時期に、「東京」というのを撮るのはどうかなって思って、何度か外に出てみましたけど。

複雑すぎてよくわからない状況の中にあって、人は一様にマスクをしている姿を見て…。それよりも、外に出て複雑だと思ったことを、家の中でならもっとシンプルにこの状況というのを受け入れながら、受け止めながら、写真を撮ることができるかなと。この際、自分の一番近いところ、家族を撮るっていう。

そっちの方が自分にとって意味があるなと、結構強く思いましたね。すぐにではないんですが、徐々にそう思い始めて。外ではシャッターを押す気にならなかった。
何かわからないものを相手にしている感じがしました。そんなよくわからないと思っているものを、撮っても…どうなんだろうか、と思いました。


― 最終的に「at Home」の続編のような作品に仕上がったわけですが、撮り始めたときに、そういうイメージはあったんですか?

それはもう、結果的にですね。
僕はだいたい、もうこれ以上撮れないって思ってから、やっとセレクトが始まるんだけど、写真をセレクトしながら、「あれ?これは…」と。


― 途中で見返したりはしないんですね。

しないんです。とにかくダーっと撮る。
 
あらかじめある考え方とか、方向性とかを決めていたら、やっぱりそれ以外のものを撮らなくなっていく、目をくれなくなるということってあるじゃないですか。ポートレート撮るんだ、とか、風景を撮るんだ、とか、自分の中で決めていると。

でも、本当は、僕らは毎日いろんなものを見ている。それで「あっ」って思ったりすることを、パっと撮っておくことが「写真」だと思うんですよね。それでいいと思っているんです。

僕も時には何かテーマとかを決めて撮ったことはあります。ポートレートばかり撮ってたり、森ばっかり撮ってたりもしましたが、今はそう思うんです。


― GR IIIのムック本(インプレス発行)でも、「自分の考えに追いつかれるな」という言葉を言われてましたね。

From the Hip(フロム・ザ・ヒップ)ですね。
ホントに、いまもまさしくそうで。自分の考えに追いつかれないように、その前に撮っちゃうってことが大事で。それが、すごくできるのがGRだと思うんです。それをカタチにしてくれる。
 

― きっと、それは、上田さんだから「写真」になっているっていう気もしちゃいます。たとえば、あまり「写真」を積み重ねてきてない人が、そこの言葉の部分だけを真似しても、上田さんみたいな写真にはならないかもな、、と。そこはやっぱり、生きてきた中でのいろんな物の見方とか、そういったことが出ているということなんでしょうか?

たとえば、GRで僕みたいな写真を撮りたいと思った人がいたとして、それを追求しようとすると、不幸になる。ヘンな意味じゃなくて、素直に自分の家族とか、近いものに向き合って、あっと思ったら撮るっていうことを続けることで、その人の写真になっていく。それを僕がみたら、ああ素晴らしいな、って素直に感じると思います。それは僕には絶対撮れない瞬間ですから。

それぞれの人が、“うまい写真を撮ろう”なんて絶対に思わないようにしながら、素直に、あっと思った「いま」をちゃんと残そうと思うだけで、カメラをちゃんと使えば、その人が立ち会った瞬間がそこに記録されるわけですから。
そのことが素晴らしいと思うんですよね。

構図とか、バランスとか、色合いとか、そういうことじゃなくてね。そういうことを考え出すとろくなことがないと思うし、すごくカタイ写真になってしまう。みんなスマートフォンで思うままに撮っているように、同じように撮ればいい。
 
あっと思ったら、撮ればいいです。その積み重ねだと思います。

 
― 素直さや、ありのままということで言えば、今回のカタログは、色校正で色の赤字をほぼいれませんでした。上田さんがそのまま(GRの撮って出しデータのまま)出してもらえればいいです、と言われたその通り、そのまま素直に印刷会社さんで出してもらったもので、美しくきれいに仕上がっていました。
 
そこにある情報をそのまま出すということが、写真の持つ瞬間的で奇跡的なことを生け獲りにできる、そういうことだと思うんです。せっかく写っていることを、そのまんま触らずに出すというのが、一番豊かなことかなと。
その後の自分の思い入れで、もっと青かったよね、ってどんどんブルーを足していくようなことをしてしまうと、そこに本来あったものを失くして、どんどんプアになっていく。なので、そのイメージのニュートラルなところ、偏ってないところを探すクセがあるんですよね。

僕は、思い入れで過剰にイメージを付加したりすることは絶対避けたいと思っています。なので、まずは、そのまんま出してみてください、って。そうしたら一番、豊かなんじゃないかなと。


― 撮ったそのままが一番美しいというのは、デジタルの世界では、結構難しいような気もします。あとで明るくしよう、とか、ちょっといじればいいかな、とか、なんとなく後でデータに手を入れることを前提にしてしまいがちというか。

写真はここ(GR)に取り込む光の量をどう決定するかでイメージが決まる。
あ、いいね、って思ったら、それがいいってことなんです。撮ったときの見えたことが、思った通り、なんです。自分が見ているものが。
だから、あとで明るくとか暗くとか、そういうことが起こらない。
 
アッと思ってパッと撮って、それこそがイイと感じているから、あとでどうこうは無いですね。
 

― 今回の撮影も、GRの設定はシンプルでしたね。

そうですね、Pモードで、イメージコントロールもスタンダードです。

印刷もそうですけど、言えば言うほどダメになっていく、っていうのあるじゃないですか。

印刷という段階でいつも思うんですけど、ホントにうまくいく方法は、そのまんま出してみてくださいとお願いして、ある程度よかったら、「いいですね」と言うところからはじまるのかなと。そうすると、理解しあえる。

まずは、全体を見て話をする。部分的に見て、ここの赤が、このグリーンが、ということではなくて、全体をパっと見ていいなって思ったら、僕は、まずはそれでいいなと思うんです。おおざっぱという意味ではなくて、あ、いいな って思う、そういう感覚を大事にしたいと思っています。
人間の目ってすごいから、だいたい見てるんですよね。全部見えていて、「あ、いいな」って言ってるんです。

でも、じっと一か所を見て、「うーん、こんなに赤かったかな」なんて言い始めて、「ここ、ちょっと赤引いてほしいです」とか言っちゃうと、それが現実にマイナスされて出てくるんですよね。
そうすると、ここはよくなったんだけど、こっちが…となっていく。不自然のかたまりみたいなものになっていきますよね。

カメラはかなりいい状態に作られているわけだから、あとで細かくいじる、ということをする必要がほんとは無いんじゃないかなと思います。

一方で、これはデータで、撮ったものは当然あとで自分の思うイメージに近づけるため、より自分の思う方向にもっていくんだ、って強く考えている人もいる。もちろんそれはそれぞれの考え方なので、積極的に良いと思ってます。

 
― 今回のカタログの紙も同じことですね。当初使おうと思っていた紙は、紙にテクスチャがあっておしゃれだけど、紙にへんに頼っている感じがする、というお話があり、別の紙を選び直しました。

先ほども話しましたが、リッチっていうのは、僕は付加しないことかなと。なにかイメージを外側から重ねて、本来無いものを足しちゃうと、プアになると思うんですよね。

本来あるものを、そのまま出すためには、何を選べばいいの?っていう考え方がリッチな考え方だと思うんです。

そこに全部、そのまんまある、ということを大事にする。飾れば飾るほど、化粧すればするほど、ホントかな??って思う。本来あったものが見えなくなっていくような気がするんです。写真は、それに敏感じゃないかなと思います。


― それは、まさに、GRのコンセプトにも通じることのような気がしますね。この紙は、私もカタログとして初めて使いましたが、発見でした。受け取ってくれた人の反応が楽しみです!

印画紙みたいでいいですよね。
やっぱり、写真を紙で残す、紙で見る、カタチに残す、というのはすごく意味がある。データで見ているのとは全然違いますからね。

封筒に作品を入れて、それをお店で配布する、飾れるカタログという企画はすごく面白いし、いいなと思いました。

 
― 作品が思うように撮れない、納得いくものが撮れないということって、みなさんあると思うのですが、上田さんはそういう時は、どうやってそこを乗り越えるんですか?

まあ、撮れないときは撮れないですからね(笑) 調子悪いなーってね(笑)
でも、あるとき、ワーっと撮れるんですよ。

自分が何を見てるのかということに気が付いたり、気持ちがすごく自由になっているときとか、バンバン撮れますね。なにを撮ってもいいんだ、っていう感覚が大事。

あとは、やっぱり、喜びだと思うんですけどね。

撮っていて、喜びが湧き上がってくると、バンバン写真が撮れる。当たり前だけどなにも感じないのに、シャッターは押せないものね。

 
でもホント、僕にとってGRは、身を任せて撮れるカメラだな、と思います。GR IIIのムック本のときの From the Hip(フロム・ザ・ヒップ)という話がありましたが、そんなことがホントに実現できる、思った瞬間にパッと撮る、そういうカメラの代表的なものだと思います。

いつも、ポケットに入れてますね。犬の散歩に行くときもポケットに。

無いと悔しい思いをしますから(笑)

 
インタビューを終えたあと、「実は今日、僕、誕生日なんです」と、そっと言われた上田さん。そんな大切なお祝いの日に、インタビューをさせていただけて、とっても光栄でした。
 

上田義彦さんの作品は、GRの製品サイトでご覧いただけます。ぜひ、ギャラリーコーナーも合わせてご覧ください。

また、本日(10月1日)、GR IIIxの発売となります。このタイミングに合わせて、店頭ではGR III&GR IIIxのカタログも配布を開始しています。

今回のカタログは、“作品”を持ち帰っていただき、そのまま飾ってもらえるような、じっくり眺めてもらえるような、そんなコンセプトのカタログにしたいと思い、GRのオリジナル特製封筒に上田義彦さんの作品を2枚封入しています。

ー 紙でしか伝えられない、写真そのものをしっかり見てもらえるものにする
ー そのため、スペックの解説などはWEBに任せる
ー 写真の力を信じ、どのカメラでも使えそうなセットフレーズや洒落たキャッチコピーさえも付けない

前作のカタログの時と同様に、この3つのことを大切にしながら、今回は、“作品”を持ち帰る、ということを、楽しんでもらえたらと思っています。これをカタログと呼ぶのか?と言われるかもですが、GRらしい新たなチャレンジをしてみました。
 
なお、リコーイメージングスクエア東京とリコーイメージングスクエア大阪では、それぞれ、封入作品を変えています。こちらもお楽しみに!


★RICOH GR Ⅲ PERFECT GUIDE(ムック本/株式会社インプレス)はこちら

(まちゅこ。)
 

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