【SPECIAL】操上和美とGR

2021.08.23 BLOG

 
SPECIALコンテンツ第八弾は、GR(2013年発売)のカタログ作品を撮影いただいた写真家の操上和美さんの登場です。当時のニューヨークの作品とともに、「手」の表紙がとても記憶に残っています。

今回、雑誌「SWITCH」(9月号:8/20発売)の操上さん特集企画で、GR IIIを使ってくださっていると聞き、お話を伺いました。

さらに、本誌では掲載していない、操上さんの故郷の作品(GR IIIでの撮り下ろし!)を、ぜひ堪能ください!

***

北海道・富良野。
富良野盆地と呼ばれる山々に囲まれた水田地帯が広がる地に、操上和美は生まれた。1936年1月のことである。1960年、写真家を志し24歳で上京。齢85を迎えた今もなお写真家として第一線で活躍する操上がこの夏、雑誌「SWITCH」の企画で出生の地を訪ねた。その旅の道程で操上は、GR IIIを手にスナップ写真を重ねていった。
 

 
「操上和美とGR」

GRとの出会いはニューヨークだった。GRでニューヨークをスナップしていった。
 
それまではライカのフイルムカメラを下げてスナップしていたが、GRはデジタル。デジタルカメラでスナップするのは初めての体験で、以来デジタルの便利さやスピード感に慣れていった。

撮って帰ってきて、フイルムを現像して、そこからコンタクトを選ぶ、というやり方をフイルムカメラではしていたが、GRだと、その行程を挟まずに目と生理の延長として撮っていくことができる。ニューヨークでのスナップもデジタルでの撮影に慣れない中ではあったが、意外と自然にすんなり受け止めることができた。フイルムはカメラで撮るだけでなく後で暗室でコントロールする。デジタルでも、やり方を覚えてしまえば同じことだった。僕は必ず、撮りっぱなしではなく後から調整を加える。

それ以降、僕にとってGRは“旅の友”。ポケットにも入るサイズ感であり、かつよく写るという、スナップショットに最適なカメラだ。ちょっと街を歩く時でも、例えば車に乗っている時だって窓からスナップすることができる。GRでのスナップは、僕にとって呼吸のようなものだ。

じっくり構えて撮るというよりは、感覚と目の延長として、感じた時にスッと撮れる。GRが僕の手になり、目になるのだ。
 

もともとライカのフイルムカメラで撮っていた時から、50mmではなく35mmを標準レンズとして使っていた。ポートレイトだからレンズを変えて、などと面倒くさいのがあまり好きではなくて、35mmだとポートレイトもスナップショットも日常的に兼用できる。

だからGRの単焦点レンズは、そのフレーミングが心地良いし、デジタルの28mmはスタンダードレンズとしてちょうど良いのではないかと思う。設定はISO400で絞りは5.6。その時と場所によってもっと開放しても良いが、スナップショットはじっくり撮らないので絞りを少しだけ入れている。開放で撮るためには立ち止まらないといけないが、僕は歩きながらでも撮れる、立ち止まらなくても撮れる、という状態の方が良い。

ただ、GRの欠点を一つ挙げるならば、あまりにも利便性がありすぎるので頼りすぎてしまう。その危険性はあると思う。自分の生理に近い感覚で習慣的に記録していくことはできるけれども、来るべき瞬間をじっと待つということ、時間の熟成を持たなくなっていく。あと何分待てば、もっといい光がくる、果物が美味しく熟れていく。時間で熟成していく被写体の良さを考えなくなる。そんな便利さに負ける恐れがある。

だから、待つ態度を失うのではなく、その危険性をわかった上でこのカメラを手にしている。僕は、一回撮って「いいな」と思う場所には、改めてもう一回行くことがある。そうすると、いい光が来ていたりする。

物に対峙していく自分の心構えは、カメラや機材が変わったからといって変わることはない。そこが変わってしまったら、写真家の節操が損なわれていくのだ。
 

<操上和美プロフィール>
1936年生まれ、北海道富良野出身。24歳で上京し、1961年に東京綜合写真専門学校を卒業後、家庭総合雑誌『住まいと暮らしの画報』カメラマンを経て杉木直也が設立したセントラルスタジオに立ち上げから参加。1965年よりフリーとなり、以後50年以上もの間、ファッション、雑誌、広告写真の第一線であらゆる人物や景色にレンズを向け続ける。1981年に小林麻美写真集『裸婦』で第十二回講談社出版文化賞を受賞。他、ADC賞、ACC賞など多数の賞に輝く。主な写真集に、『Sadao: Sadao Watanabe Land』(1981)、『陽と骨』(1984)、『KAZUMI KURIGAMI PHOTOGRAHS ―CRUSH』(1989)、『NORTHERN -北の風景』(2002)、『April』(2018)など。

写真家・操上和美を90ページに渡り特集した雑誌『SWITCH VOL.39 NO.9』が現在発売中。


GRistページでも操上さんの作品を紹介しています!
 
 

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